【視点】新型肺炎、戦略転換迫られる観光

 尖閣諸島、人権問題など日中間の火種は多い。韓国客の現状を見れば「中国リスク」の大きさは否定できないだろう。
 今回の新型肺炎の問題がなくても、過度な中国依存にはブレーキをかけ、欧米や東南アジアなどで誘客先を新規開拓する努力が欠かせない。
 だが玉城知事は記者会見で「軽々に国を変えて売り込みに行くことには、いろいろな検討が必要だ」と述べるにとどめた。発言からは、沖縄観光が大きな分岐点に立っているという危機感が感じられない。観光産業を経済の柱とする沖縄で、肝心のリーダーが事態の急変に対応できていない。
 新型肺炎の侵入リスクも県観光の重大な懸念事項だ。
 米国は1月31日、公衆衛生上の緊急事態を宣言し、過去日間に中国を訪れたことのある外国人の入国を拒否すると発表した。イタリアのように、中国便の全面停止を打ち出した国もある。
 日本政府は新型肺炎の発生地である中国武漢市を含む湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否する方針で、米国などより規制が緩い。ウイルス侵入防止のためには、必要最低限の場合を除き、中国本土と日本の往来を大幅に制限する措置が必要だ。
 沖縄には今月も中国本土からのクルーズ船入港が予定されている。玉城知事が「観光客や事業者の健康と安全を第一に考える」と言うなら、この点に関しても見解を示すべきだ。中国人客の減少リスクや、新型肺炎の侵入リスクに備える「観光危機管理対応」という言葉は踊るが、中身が見えてこない。
 往来制限により、米中や日中間の交流縮小を懸念する報道もあるが、そのような話をすべき時期は既に過ぎている。観光立県の沖縄が国内でも率先して「脱中国」へ舵を切り、身軽になるほどの覚悟が必要なはずだが、玉城知事の会見から伝わるのは、県の腰の重さだけだ。

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