【視点】離島住民にもしのび寄る「自殺」問題

 自殺者というと経済的に困窮しがちな無職者や、同居家族のない孤独な姿をイメージしがちだが、市の統計を見ると、実際には有職者が5割超、同居者ありが7割超に達している。仕事の失敗や人間関係のつまずきがストレスになり、家族に相談することもできない実態が浮かび上がる。
 沖縄本島や八重山でも人手不足が続き、一人当たりの労働時間が長時間化する傾向があり、職場でサラリーマンにのしかかるプレッシャーは苛烈の度を増している。新型コロナウイルスの感染拡大で経済の先行きも不透明感が増し、全世界的に不安が広がりつつある。新たな危険水域が近づきつつあると見るべきだろう。
 興味深いのは「自殺したいと考えたとき、どのように乗り越えたか」という設問だ。「趣味や仕事など他のことで紛らわせるように努めた」「家族や友人、職場の同僚など身近な人に悩みを聞いてもらった」が上位に入った。情熱を傾けて打ち込める仕事や、プライベートを充実させる趣味、そして何でも話せる相談者の存在が自殺防止の重要なカギであることが分かる。
 アンケートでは、行政に求められる自殺予防対策として「相談窓口の設置」「子どもの自殺予防」「さまざまな分野でのゲートキーパー養成」などが多数を占めた。
 八重山でも市役所、健康福祉センター、保健所などに自殺に関する相談先があるが「知らなかった」という人が7割に近く、十分に機能しているとは言えない。相談先の周知が今後の課題である。
 「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、必要な支援につなげる人のことで、国は教職員、保健師、看護師など、関連するあらゆる分野でゲートキーパーとなる人材の養成を図っている。こうした取り組みを八重山で普及させていくことも自殺予防には有効だろう。

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