【視点】慰霊の日 平和の灯後世に

 真夏へと向かう沖縄は、今年も「慰霊の日」を迎えた。爆弾の雨が沖縄各地に降り注いだ灼熱地獄の記憶は今も生々しく語り伝えられているが、戦争体験者は高齢化が進む。今を生きる世代は、沖縄戦の教訓を風化させず、平和の灯(ともしび)を後世へ受け継いでいかなくてはならない。
 県によると、沖縄戦では住民と日本軍がそれぞれ約9万4千人、米軍が約1万2千人戦死した。八重山では、住民が避難先でマラリアにり患した「戦争マラリア」で約3600人の死者が出た。膨大な血を流した沖縄県民は、全国でもとりわけ、強く戦争を憎み、平和を希求する心を抱き続けている。
 今年は新型コロナウイルスの影響で、多くの市民が参列する式典は不可能になり、八重山でも追悼式は規模を縮小して開催される。玉城デニー知事は「それぞれの家庭や職場で黙とうをささげてほしい」と呼び掛けた。きょうは一時(いっとき)だけでも、平和の尊さに思いをはせる時間を持ちたい。
 戦後75年間の平和は日米同盟の抑止力によって担保されたが、多くの犠牲を払った当の沖縄に広大な米軍基地が残されたのは皮肉な現象だった。しかし時代は巡り、米国の圧倒的な国際的地位も、中国の台頭で揺らぎ始めている。
 今後も平和で繁栄した社会を子孫に引き継ぐことができるか、米国の力をもってしても、もはや絶対の保証はない。かつての米ソのように、米中が軍事力を誇示しあう不安定な時代が始まったことを率直に認める必要があるだろう。
 沖縄にとって、中国との摩擦は尖閣諸島問題が最たるものだ。中国は今、新興の超大国として勃興期にさしかかっているが、日本は長期の経済低迷や少子高齢化で国力を消耗させている。経済力でも軍事力でも、両国の格差は年々開く一方だ。
 尖閣周辺での中国の傍若無人な態度は、多かれ少なかれ、両国のパワーバランスの不均衡からくる自信の表れに見える。
 しかも中国は、習近平国家主席のもと「中華民族の偉大な復興」をスローガンに掲げた。この言葉からは、古代中国以来の最大版図を再び実現しようとする意図しか読み取れない。南シナ海と同様、尖閣問題でも一歩も譲らない強硬姿勢が、そのことを如実に示している。対中最前線である沖縄で県民の不安が昂じるのは、当然のことと言えるだろう。
 尖閣周辺での緊張状態を軍事衝突にエスカレートさせないために、日本としては着実に抑止力の向上を進める必要がある。
 沖縄本島では米軍基地の負担軽減と抑止力維持をどう両立させるかが最大の課題だ。普天間飛行場の辺野古移設はまさにその答えなのだから、政府は県民と正面から向き合って理解を求め、移設の早期実現に努めてほしい。
 南西諸島への自衛隊配備は何とか順調に進捗(しんちょく)し、最後に残された石垣島への配備も防衛省の用地取得がほぼ完了してヤマを越えた。
 沖縄周辺の国際的緊張が高まる中で、住民の生命や財産の安全に責任を持つ政府が何もしないということは有り得ない。戦争の惨禍を二度と繰り返さないためにも、守りを固めるのは当然のことと言えるだろう。

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