【視点】住民投票で決められるのか

 石垣市平得大俣地区への陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票実施を市民30人が市に求めた訴訟で、那覇地裁は27日、訴えを却下した。住民投票の実施は、訴訟の対象となる行政処分には当たらないという判断だ。おおむね常識的な判決といえる。
 中山義隆市長は16年12月、自衛隊配備の受け入れを表明。防衛省は500~600人規模の隊員を置く計画で、19年3月に駐屯地の造成工事に着手した。
 今回は陸自配備計画を巡る全国的にも異例の裁判で、判決は大きな注目を集めた。最大の争点は、原告側が市民約1万4千人の署名を集めて行った住民投票の実施請求に自治基本条例が適用され、中山義隆市長に住民投票の実施義務があるかどうかだった。
 自治基本条例では「有権者の4分の1以上の署名で住民投票を請求でき、市長は所定の手続きを経て実施しなければならない」と規定している。
 原告側は地方自治法に基づき、市民約1万4千人の署名で住民投票の実施を市に請求した。市議会は住民投票条例を否決したが、原告側は有権者の4分の1以上の署名が集まった時点で自治基本条例が適用されると解釈。議会で否決されたかどうかにかかわりなく、市には住民投票の実施義務があると主張した。
 平山馨裁判長は「仮に住民投票を実施しないことが違法だとしても、その救済は実施義務付け以外の方法で図られるべきだ」と指摘し、具体的な審理をせずに訴えを退けた。
 住民投票の実施は義務付け訴訟で請求するような性質のものではないという趣旨だ。原告、被告双方の主張に実質的な判断を下すことなく、訴えを門前払いした格好になった。
 原告側の大井琢弁護士は判決後、「判断したくないために門前払いをした判決だ。残念な結果だが、何らかの形で投票を実施させなければならない」と述べた。
 中山市長は「市の主張を全面的に認めていただいた」と判決を評価するコメントを発表。報道陣には、自衛隊配備の是非は住民投票になじまないという考えを改めて示した。
 中山市長が指摘したように、国の安全保障や外交政策を一地方の住民投票で問うことには疑問がある。
 住民投票は、市役所の位置を決定したり、自治体の合併の是非を決めたりする場合のように、一地域で完結できる問題の解決に活用されるべきだ。そうした住民投票は過去、実際に八重山でも実施されている。
 しかし自衛隊配備の是非などといった問題は、明らかに住民投票で問われるべき範疇を超えている。住民投票の結果として安全保障に支障が出る事態になったとしても、住民はその責任を負うことができないからだ。
 こうした問題に関しては、住民は選挙を通じて政治的意思を示すことになる。住民投票が実施されないとしても、それで憲法が保障する意思表明の機会が奪われたことにはならないだろう。
 原告の金城龍太郎さんは「あきらめないでできることをやりたい」と今後も住民投票の実現を模索する考えを示している。
 金城さんらの署名活動を通じて市民が陸自配備を考える機会になったり、若者の政治参加の意識が高まった側面はあるかも知れない。自由な議論や、多様な考えを認め合う寛容さが社会には必要だ。

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