絵が語る八重山の戦争 体験、描き残す必要ある 潮平正道さん画文集刊行

『絵が語る八重山の戦争』を手にする潮平さん(前列左)と三木委員長(前列右)ら=11日午後、大濱信泉記念館2階多目的ホール

 郷土の戦争体験を遺し伝えようと、潮平正道さん(87)=石垣市石垣=がこのほど、自身の体験や体験者の証言を基に描いた作品を収めた画文集『絵が語る八重山の戦争 郷土の眼と記憶』(南山舎)を刊行した。

 「戦争体験は薄れていかない。生々しく自分の中に残っている。鉄血勤皇隊であったから、民間人より深く体験することができ、それが絵の材料になっていると思う」
 潮平さんは昭和8(1933)年1月20日、石垣市字石垣生まれ。旧制中学校時代、沖縄戦の戦闘要員「鉄血勤皇隊」だった。
 作品を手掛けるきっかけは、25年ほど前に市内小学校で行なった「平和学習」。児童に体験を伝えるも、「低学年は理解できていないのでは」という懸念を抱き、絵で伝えることを思い立ったという。
 同書では作品58点が収められており、娘や孫が潮平さんから聞き書きした文章も添えられている。
 11日午後、大濱信泉記念館で行われた刊行会見で、潮平さんは「体験者が少なくなってきている。本にすることで体験を伝えていこうという意識で絵を描いた」と振り返った。
 戦争マラリアを語り継ぐ会の会長でもあり、「マラリアでのみじめな姿をいくつも見た。何らかの形で描き残す必要はある」と強調。
 「名蔵の平野で空腹の兵隊に芋を奪われたという話も聞いた。そういうのを絵にする機会があれば」と、今後の活動に意欲を示した。
 刊行委員会の三木健委員長は同書の特色について①八重山では戦時下の写真の記録がなく、視覚的に訴えるもの②他の体験者の証言も絵にしている③学校現場での「平和教育」での活用が期待できる―と指摘。
 「潮平さんはこういう記録を残せる最後の世代。もっともっと描いて残してほしい」と期待し、「映像化などもこれからの課題では」と提起した。
 同書では地図、八重山地域のマラリア罹患状況と死亡状況、八重山戦争関係年表も収録されている。
 159㌻。1800円(税別)。8月15日出版。

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