【視点】新党、地方に光当て現実的な議論を

 立憲民主、国民民主両党などの合流新党の代表選で、立民の枝野幸男代表(56)が国民の泉健太政調会長(46)を破り、初代代表に選出された。自民党に代わる政権の選択肢となるか注目される。
 ただ枝野代表の発言を聞いていると、時を同じくして実施されている自民党総裁選に比べ「地方」への言及が少ないことが気になる。
 枝野代表は代表戦で、政策の柱として、新自由主義から個人を重視する立憲主義への転換、公文書管理や情報公開の徹底、一極集中の転換、現実的な外交安全保障政策を掲げた。地方活性化は「一極集中の転換」に含まれる政策だが、言葉だけでは具体的なビジョンが見えてこない。
 記者会見で地方に関する政策を問われ、医療、介護、福祉、子育て支援など「ベーシックサービス」の充実を掲げた。「しっかりと公的なお金をつけて雇用の場にしていく」と強調した。地方が自由に使える一括交付金の増額や、農業など一次産業の振興も掲げた。
 だが、それは今さら言及するまでもなく当然の話である。地方から技術革新やブランド化を進め、地方の元気を日本全体に波及させる。地方に住んでいることがむしろアドバンテージになる。これからの日本は、地方が活力の中心となる社会を目指さなくてはならない。政治家は、地方に夢を抱かせるメッセージを発信してほしい。
 地方に根付いた政党としては、自民党のほうが先を行く。記者会見でこの点を突かれた枝野氏は「一朝一夕で(自民党と)同じことができるとは思っていない」と地方での基盤の弱さを認めた。早い時期に都市型政党からの脱皮を図らなければ、政権は遠い。
 八重山の離島では、立憲民主党はおろか沖縄選出の国会議員でさえ、一般の有権者が野党議員の顔を見る機会はほとんどない。野党は大都市や沖縄本島に顔が向きがちだという印象が拭えない。
 人口が多い地域は、ただでさえ恵まれている。政治には大都市よりも地方、本島よりも離島と、まずは周縁部から光を当てていく「きめ細かさ」を望みたい。
 代表選で枝野代表は特に米軍普天間飛行場問題に触れ「海兵隊の新基地を造らず、同時に普天間の危険性を除去することは十分に可能」と述べ、辺野古移設反対を明言した。
 具体的な手法としては、米国と期限を切らず「粘り強い交渉をしなくてはならない。多様なルートをしっかりと作っていく」と説明した。
 日米の歴代政権が長年にわたって積み重ねてきた合意をほごにするのであれば、日米同盟のあり方の見直しも含め、重大な決意で臨む必要があるはずだ。枝野代表は「真剣に考えているからこそ、無責任なことを言うつもりはない。全力を挙げてチャレンジする。特に沖縄県民の皆さんに自信をもってお約束させていただく」と言い切った。
 だが、自民党と同様に「健全な日米同盟」を外交の基軸に位置付けながら、辺野古移設の中止を「米国と粘り強く交渉する」と言うだけでは、説得力に乏しい。「最低でも県外」を掲げて政権を奪取したのに、結局は辺野古移設に逆戻りした民主党政権の轍(てつ)を踏むことにならないか。
 沖縄では辺野古移設の中止要求だけが先行し、普天間飛行場の危険性除去の議論が後回しにされている。新党も同じ泥沼に足を突っ込まないでほしい。枝野代表自身が表明したように「命と国益を守る現実的な外交安全保障政策」を追求する必要がある。

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