【視点】米の対中姿勢 討論会で見えず

 米大統領選で第1回の候補者討論会が行われ、共和党の現職トランプ氏と民主党の前副大統領バイデン氏が直接対決した。貿易や人権問題などで米中対立が深刻化しているというイメージを抱いている日本人にとって意外だったのは、外交、とりわけ対中政策が討論会のテーマにならなかったことだ。
 トランプ氏は新型コロナウイルスの感染拡大に関し「中国のせいだ」と対中批判を何度か口にしたが、バイデン氏からこの種の発言は一切なかった。
 討論会は今後も行われるため、当然外交政策も今後、重要なテーマになるはずだ。だが、しょっぱなの討論会で対中政策が無視されたということは、一般的な米国人の意識に「中国脅威論」がさほど浸透していないことをうかがわせる。米中対立の深刻化とは裏腹に、むしろ国民の中国に対する関心は薄いと言っていいのだろう。
 第1回討論会で冒頭のテーマに選ばれたのは、トランプ氏による最高裁判事の任命だった。新型コロナウイルス対策はもちろん議題になったが、その他のテーマも人種差別問題や経済対策など、内政問題に終始した。
 各種世論調査では、対中政策にほとんど言及しないバイデン氏が軒並み優勢を保っている。中国に対する強硬姿勢を今選挙の争点に掲げようとするトランプ氏の狙いは、明らかに奏功していない。
 確かにトランプ政権の厳しい対中姿勢は一貫している。6日に東京で開かれた日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国外相会談で米国のポンペオ国務長官は新型コロナウイルス対策、南シナ海、東シナ海、台湾海峡などを列挙し「連携して中国共産党の搾取(さくしゅ)、威圧から守らないといけない」と訴えた。
 だが、米国が日韓や欧州などに呼び掛けている対中包囲網の構築は、どこまで進むか未知数だ。そもそも米国内の世論が盛り上がっていない以上、中国はトランプ政権の批判をかわしながら、米大統領選まで「嵐が過ぎ去るのを待つ」という姿勢のようだ。
 米大統領選でバイデン氏が当選した場合、現在の対中強硬路線は維持されるのか。
 民主党は国際協調の重視を掲げている。トランプ氏が「中国に支配されている」と脱退を表明したWHО(世界保健機構)にも、バイデン氏は「当選したら就任初日に復帰する」と言明した。
 「バイデン政権」はむしろ、オバマ政権時代のような対中融和政策に転換する可能性が高いように感じる。副大統領候補のハリス氏も、外交経験が皆無であることが指摘されている。
 一般論として米中の緊張緩和は歓迎すべきことだ。だが八重山住民にとっての問題は、米国の対中圧力が弱まれば、石垣市の尖閣諸島周辺で、中国の対日圧力が強まる恐れがあることだ。
 周辺海域では海上保安庁の巡視船と中国公船がにらみ合っており、既に一触即発の状況にある。中国政府はさらに、尖閣諸島の領有権を主張するウェブサイトに「デジタル博物館」を開設するなど、独自の動きを強めている。
 日本語版のウェブサイトを読むと「世界反ファシズム戦争の勝利の成果を守る決意は決して揺るぎない」「われわれは、日本が歴史的事実と国際法理を踏みにじる行為を打ち砕き、地域の平和と秩序を守る自信と能力を持っている」と、好戦的な言葉が並ぶ。
 外交的、平和的な解決が望ましいのは当然だが、中国の尖閣侵奪に向けた決意は固く、とても一筋縄ではいきそうにない。
 日本だけで中国と対峙するのが厳しい状況である以上、米国にもそれ相応の覚悟で連帯を求めなくてはならない。だが、米大統領選の第1回候補者討論会では、米国のポリシーが全く見えてこなかった。

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