【視点】厳しい関係続く菅政権と玉城県政

 玉城デニー知事が7日、首相官邸で菅義偉首相と会談した。両者の顔合わせは菅首相の就任後初めてだったが、沖縄振興で連携する姿勢を確認しただけで、会談は約5分間で終わった。
 知事が首相と面会すること自体が異例なので、5分間を長いとも短いとも評価はできない。ただ玉城知事や翁長雄志前知事が安倍晋三前首相と会談した際は、報道陣に冒頭が公開され、両者が握手している写真などが撮影されるのが常だった。今回はそれがない。
 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡って鋭く対立する中、対話のポーズだけ取っても仕方がないという官邸の意思の表れかも知れない。
 菅首相は今月1日、衆院選沖縄3区に立候補予定の島尻安伊子元沖縄担当相と官邸で会い、沖縄振興に関し意見交換した。普天間飛行場を抱える宜野湾市の松川正則市長が官邸を訪れた際は、急きょ面会した。
 島尻氏は現職の国会議員ではなく、松川市長は沖縄の一自治体の首長に過ぎない。だが待遇としては玉城知事と同等に見える。14日から尖閣諸島問題の要請で上京した石垣市議団が5人の閣僚と面会できたのも、中山義隆市長と安倍・菅政権の良好な関係が背景にあるだろう。
 政策実現で協力できる人であれば誰であれ喜んで協力し、話が通じそうもない相手は、そんなものだと割り切る。ビジネスライクとも言えるが、政治は結果を出すことが求められる世界だ。辺野古移設に反対する県政の側も、結果を出すためには、合理的な思考に徹して行動する必要がある。
 菅政権は来年度末に期限を迎える沖縄振興計画を検証するため、岡下昌平内閣府政務官を沖縄に派遣し、県内各市町村から意見聴取を始めた。振興と米軍基地再編をリンクさせる構えも見せている。
 菅首相は安倍政権で長く沖縄政策の司令塔を務め、現地の事情にも詳しい。実務家らしく、振興予算の中味に対し、ドライに切り込んでくる可能性もある。その意味では安倍政権以上かも知れない。
 沖縄が長く主張してきたのは、悲惨な沖縄戦や過酷な米軍統治を経験してきた歴史的経緯と、それによる経済的、社会的な立ち遅れに対する配慮だった。沖縄振興計画も、まさにこうした考えをベースに策定された。そのこと自体は誰も否定する者はない。
 だが翁長県政以来、県は辺野古移設に反対する論理にも、こうした沖縄の歴史を援用した。翁長前知事と官房長官時代の菅首相が会談した際、普天間飛行場問題の原点について翁長氏は戦後の米軍による土地強制収容だと語った。一方の菅氏は「普天間の危険性除去が原点だ」と指摘した。
 戦中戦後の歴史や県民の強烈な反戦感情を強調し「辺野古に基地は造らせない」と繰り返す県政のスタンスは「情念の政治」と呼べるかも知れない。これに対し政府は、政治的に辺野古移設以外の選択肢がないという現状を見極めた上で、今できることをやり、現下の最大の問題である宜野湾市民の安全確保を追及しようとしている。
 玉城知事を支えて辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力の興隆を見れば分かるように、情念の政治は沖縄の中では通用しているようだ。だが国内政治や国際社会では厳しい壁に直面している。そこは情念よりも、結果を出すことが求められる世界だからだ。
 玉城知事は辺野古阻止に向け、菅政権に対話を要求している。だが、対話は本来ウィンウィン(どちらも得をする)の関係の中で成立する。県もそうした関係を菅政権と構築しない限り、国政での存在感は薄まる一方だろう。

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