【視点】米大統領選 国際情勢を左右

 米大統領選の投開票が始まった。選挙結果は国際情勢に大きな影響を与え、日本の外交や安全保障も左右する。
 日本にとっての注目点は次期政権の対中政策で、米国の対応によっては、尖閣諸島問題にも何らかの変化が生じる可能性がある。沖縄県民も米国の選挙と無縁ではいられない。
 トランプ大統領は対中強硬姿勢を掲げ、関税の上乗せをテコにした「貿易戦争」に突入。中国の独裁体制も公然と批判し、アジアや西欧諸国を巻き込んだ対中包囲網の形成を図ろうとしている。
 特に新型コロナウイルス禍に関しては「中国のせいだ。責任を取らせる」と中国の防疫体制を追及。WHО(世界保健機構)に対しても「中国に支配されている」と脱退方針を決めた。
 トランプ政権の対中圧力路線は基本的に正しい。だがトランプ政権は、駐留米軍の費用分担や貿易交渉などの問題で同盟国との関係もぎくしゃくしており、米国が意図する対中包囲網の構築は進んでいない。
 選挙戦で、トランプ氏は中国批判と、対立候補バイデン元副大統領の息子、ハンター氏の汚職疑惑を全面に打ち出した。だがCNNテレビの解説者は「トランプは『中国』『ハンター』と何度も言うが、国民の多くはそんなことに関心を持っていない」と断じる。トランプ氏の対中批判は空回りしている感が強い。
 バイデン氏は候補者討論会で対中政策を問われ「同盟国と連携し、中国にルールを守らせる」と述べた。だが具体策には言及しなかった。
 バイデン陣営の副大統領候補、ハリス上院議員は、トランプ政権が中国に仕掛けた貿易戦争について「米国の敗北」と明言した。バイデン氏が勝利すれば、米国は米中貿易戦争から撤退する可能性が強く、対中圧力は緩和されそうだ。
 バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権では、中国をアジアで最も重要なパートナーとみなす傾向が強かった。トランプ氏は、米中の「デカップリング」(切り離し)にさえ言及したが、バイデン氏は中国を国際社会に迎え入れ、対等な競争相手として遇した上で、攻めるべきは攻め、手を握るべきは握るという考えのようだ。
 尖閣諸島問題に関しては、米国は日中いずれの領有権主張にも肩入れしていない。ただ日米同盟を踏まえ、中国の軍事的な進出は認めないという姿勢だ。
 もともと政治家ではないトランプ氏には型破りなところがあり、今後、尖閣問題や台湾問題で従来より踏み込んで中国を牽制(けんせい)する可能性は否定できない。バイデン氏が当選すれば、オバマ時代のような穏健政策が基本となり、中国が露骨な軍事行動に出ない限り、米国がおおっぴらに台湾や尖閣に干渉する可能性はかなり低くなる。
 沖縄の米軍基地問題への対応では、米国は民主党政権も共和党政権も一貫している。米軍普天間飛行場の辺野古移設を含む日米合意を堅持し、段階的な米軍基地の整理縮小で県民の負担軽減を図る方針だ。トランプ氏、バイデン氏のいずれが勝っても、辺野古移設方針が覆ることはないだろう。
 日米メディアの多くはバイデン氏の勝利を予想しているが、トランプ氏の猛追も伝えられている。県民にも目の離せない展開になりそうだ。

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