【視点】米政権交代「強固な同盟」維持は

 米メディアの世論調査によると、大統領選で有権者が最も重視する政策は、バイデン前副大統領の支持者が人種差別問題、トランプ大統領の支持者が経済政策だった。
 「アメリカ・ファースト」と呼ばれる自国優先主義を掲げたトランプ政権は、過去に例のない内向きの政権と言われた。だが支持者の動向を見ると、バイデン政権になっても外交より内政重視の姿勢が変わるとは思えない。「米国は世界の警察官ではない」と宣言したのはトランプ氏ではなく、バイデン氏が仕えたオバマ前大統領だった。
 大統領選を前に、黒人差別の撤廃を訴える「ブラック・ライブズ・マター」運動が激化した国内事情もある。バイデン氏が大統領就任後、優先的に取り組むのは、差別撤廃や所得格差の是正など、社会正義の実現に向けた政策になりそうだ。
 経済政策では富裕層への増税を打ち出した。トランプ氏が脱退した温室効果ガス削減の国際枠組み「パリ協定」への復帰も明言した。トランプ政権との違いは鮮明だ。
 社会正義の実現や環境保護の重視は大切なことだが、こうした政策の推進は、一方で企業活動の足かせになりやすいのも事実である。さらにバイデン氏は、新型コロナウイルス感染拡大の防止を最優先に掲げており、今後、ロックダウン(都市封鎖)をはじめとした厳しい措置に踏み込む可能性もある。
 トランプ氏は選挙期間中「バイデンが当選したら恐慌になる」と訴えたが、バイデン氏の政策だけ見れば、実際に景気を急減速させる要素をはらんでいる。
 米国経済が停滞すれば、米国を主要輸出先とする日本企業にも大きな影響が出るだけでなく、日本企業の対中依存度がさらに高まることにつながる。ただバイデン氏が政策を推進できるかは、来年1月に持ち越される公算の上院選の結果にも左右されそうだ。
 新政権の外交では対中政策が注目されるが、国内外のメディアは「民主党も共和党も対中強硬姿勢では同じ」という見方を示す。
 しかしバイデン陣営は、関税上乗せをテコにトランプ氏が仕掛けた対中貿易戦争を強く批判しており、新政権発足後は撤退する意向と見られる。トランプ氏は、新型コロナウイルス対策で不手際が目立ったWHО(世界保健機構)が「中国に支配されている」として脱退表明したが、バイデン氏は就任と同時に復帰する意向だ。
 バイデン陣営は、トランプ氏が繰り出した対中強硬カードを就任前から次々と無効化してしまっている。ファーウェイなどの中国企業の締め出し政策も継続されるかは分からない。
 バイデン氏は「同盟国と連携して中国にルールを守らせる」と述べており、米国単独でも対中圧力を強化するトランプ政権の手法は採用しない意向のようだ。だが、米国がほかに、どんな対中カードを持っているというのだろうか。
 香港やウイグル自治区などの人権や南シナ海などの軍事化問題で、米中の罵り合いが激しさを増すことは間違いない。しかしバイデン政権の「対中強硬姿勢」がその程度のものであるなら、中国の経済的台頭は再び加速することになりそうだ。
 日米同盟は誰が大統領でも揺るぎないと見られており、菅義偉首相も「日米同盟をさらに強固なものにするために米国と共に取り組みたい」と述べた。
 だが同盟関係にも濃淡はある。安倍晋三前首相が2013年に靖国神社を参拝した際、米政府の「失望した」という日本批判の声明を主導したのが、副大統領だったバイデン氏だと報道されている。
 歴史認識問題は中国が日本を牽制(けんせい)するためのカードに使われ、日韓の軋轢も強まっている。トランプ政権は中立的だったが、バイデン政権が中韓の側に立つ可能性は十分ある。
 米中関係どころか、日米関係の今後さえ見通しが良好とは言えない。最悪の場合、そのツケが回ってくるのが八重山の尖閣諸島だろう。

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