名蔵―茨城―また名蔵へ 拾われたヤドカリ、命のリレー

名蔵湾に戻されたヤドカリ

 石垣島を訪れた観光客が持ち帰った貝殻は、実はヤドカリだった―。遠く茨城県まで運ばれたヤドカリが、人々の「命のリレー」で故郷の名蔵湾に戻された。
 茨城県守谷市在住で小学校教諭山口尚子さん(56)は、8月に観光で石垣島の名蔵湾を訪れた「石垣島の自然を少しでも児童に伝えたい」と円錐状の貝3個を拾い、茨城の自宅に持ち帰った。
 ところが、貝殻は音をたてて動き出し、生きたヤドカリであることが判明。山口さんは「早く石垣島に帰さなければ」と夫とともに羽田空港に向かい、石垣島行きの旅行者に託そうとしたが見つからなかった。

 ネットで石垣島の自然環境教育に取り組む石垣島観光の美馬誠憲さんを知り、ヤドカリを預けることが決まった。美馬さんのアドバイスを受け、海水を含ませた布を貝に巻き、穴を開けた段ボールなど、通気の良い梱包を施した上で、宅配便でヤドカリを送った。石垣島に到着したヤドカリは、美馬さんの手で無事、名蔵湾に戻された。
 美馬さんは「昨今、天然記念物の亀が石垣島から持ち出されたりしているが、山口さんの命を大切にする心と行動に共感した」と話す。
 山口さんは「物音がし、ヤドカリが動き出したときは本当に驚いた。生徒から、もう貝は拾わないでね、と釘を刺された」と苦笑する。
 アンパルを守る会の資料によると、貝は干潟とマングローブに生息する巻貝キバウミニナ。10㌢ほどまで成長、ヒルギの葉を食べ根に卵を産みアンパルの生態系を担う。貝殻にヤドカリが棲む。山口さんが拾ったのは、ツメナガヨコバサミと呼ばれるヤドカリだと思われる。(伊舎堂浩明)

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