【視点】安保問われる名護、石垣市議選

 知事選に関心が集まっているが、9月9日の統一地方選も沖縄の今後を左右する重要な選挙だ。特に注目されているのが、米軍普天間飛行場の移設先である辺野古の米軍キャンプ・シュワブを抱える名護市の市議選と、陸上自衛隊配備計画が進む石垣市の市議選である。
 2月の名護市長選では辺野古移設反対派の現職が敗れ、自民、公明、維新が支援した渡具知武豊氏が初当選した。しかし、議会では少数与党であるため、早くも混乱が起きた。
 渡具知市長は公約推進のため、認可外保育園の保育料や学校給食費の無償化に米軍基地の再編交付金を充てる補正予算案を提案したが、市議会で多数を占める野党が反発。財源を財政調整基金に組み替える修正案を可決した。再編交付金を使うと、辺野古移設を容認したと受け取られるためだ。
 しかし渡具知市長が再議権を行使した結果、野党の修正案は再可決に必要な3分の2の賛成を得られず否決。結局、野党が退席する中、与党が単独で補正予算案を可決し、再編交付金を財源とする保育料と給食費の無償化が9月からスタートすることになった。
 少数与党だと不安定な市政運営を余儀なくされるが、特に辺野古移設を巡る問題では今後も与野党の激しい対立が予想される。市議選は単に渡具知市政の今後だけでなく、政府が辺野古移設作業を着実に進めることができるかどうかを占う選挙になる。
 石垣市では現在、与党が多数を確保しており、中山義隆市長は比較的スムーズな市政運営を続けてきた。今選挙の立候補予定者30人の顔ぶれを見ると、革新系に対し保守系が圧倒的に多いが、中山市政を支持しない者もおり、一概に与党優位とは言えない。
 石垣市が陸上自衛隊駐屯地の建設予定地である市有地を防衛省に売却するためには議会の承認を得る必要がある。中山市長は市有地の提供に積極的に応じる方針を示したため、自衛隊配備の是非が市議選の大きな争点だ。配備計画が用地取得という大きな節目にさしかかろうとしていることを考えると、市議選は陸自配備推進派と反対派の〝最終決戦〟となる可能性が高い。
 名護市議選では辺野古移設、石垣市議選では自衛隊配備という安全保障の国策が問われる。市議選は政策より地縁、血縁などの要素が当落を大きく左右すると言われるが、有権者も惰性で投票するのではなく、候補者や市政のあり方を見極める視野を持つ必要があろう。
 統一地方選が終わると、一気に9月30日の知事選になだれ込む。宜野湾市長選、石垣市、うるま市の県議補選も同時に行われる〝選挙ラッシュ〟の日である。告示日は知事選が9月13日、県議補選が同21日、宜野湾市長選が同23日。いずれの選挙も、まだ予定候補者の動向が不透明で、選挙戦の構図が固まっておらず、与野党とも超短期決戦の取り組みを強いられる。今後の推移を注視したい。

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