【視点】住民投票、求められる慎重さ

 住民投票の実施を求めて署名した約1万4千人の中には、陸自配備賛成の人もいたというが、どれだけの人が、陸自配備を住民投票で問うことの微妙さを理解して署名したのか。
 地方自治法では、住民の直接請求で条例を制定する場合、一定数の署名だけでなく、議会の議決が必要とされている。単純な「民意」に加え、最終的には政治家の関与というクッションが必要だと立法者が認識しているからだ。
 約1万4千人の署名は重いが、それだけの署名が集まったから即、住民投票を実行せよという野党の主張は、問題の微妙さを考えると納得できない。「署名の重み」をあまりにも強調する論調は、物事の一面しか見ていない。
 石垣市の自治基本条例は、議会の議決を得ることなく、一定数の署名のみで住民投票が実施できるような規定になっている。今回はたまたま、条例の不備で実際に運用することができなかった。そのため条例を改正し、確実に住民投票を実施できるようにすべきという声も一部にある。しかし話はむしろ逆だ。法の趣旨を踏まえれば、むやみに住民投票実施のハードルを動かすことには慎重であるべきだ。
 住民投票条例案の付託を受けて審議した総務財政委員会、本会議ともに賛否同数になり、それぞれ砥板芳行委員長、平良議長が最終的に否決を決断した。砥板委員長は「(駐屯地建設は)着工や民間の用地契約の手続きも進んでおり、住民投票は時機を逸している」、平良委員長は「十分な審議なしに住民投票条例を通せば、混乱が危惧された」と否決の理由を説明した。
 一定の署名数のみでストレートに住民投票が実施されてしまっていれば、このような視点は置き去りにされ、市の将来に禍根を残すような混乱が起きた可能性もあった。
 安全保障や外交が絡む住民投票ともなればなおさらだ。実施を判断するにあたっては、常に何らかの政治的判断の余地を残しておくべきだろう。

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