【視点】安全保障 「風」任せでいいか 

 石垣島平得大俣地区への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票案を巡り、石垣市議会の特別委員会で審議が始まった。しかし、そもそも住民投票は不要とだとする与党側と、住民投票の実施を前提として条文の審議に入りたい野党側の間で認識の相違があり、議論は平行線をたどっている。国の安全保障や外交に関する問題を、一地方の住民投票で問うのは本来、不適切とされる。この住民投票が本当に必要かどうか、改めて考え直してみる必要がありそうだ。
 防衛省が南西諸島への陸自配備を進める背景には、沖縄を取り巻く国際環境が厳しさを増している現実がある。
 尖閣諸島の領有権を主張する中国は領海侵犯を日常化させ、その勢力は八重山の目前まで迫ろうとしている。沖縄と一衣帯水の間柄である台湾への圧迫も強めており、中国共産党は、独立阻止のために武力行使も厭わないと明言している。
 2016年には与那国島に、今年3月26日には宮古島、奄美大島で陸自の駐屯地が開設された。残るは石垣島だけだ。石垣島への陸自配備は日本の防衛体制を固める大がかりな計画の一環であり、石垣島だけが取り残される形になるのは好ましくない。
 住民投票には危険性も伴う。EU離脱を巡る英国の混乱が好例だ。国民の安全保障に関わる決断を、時の多数派という「風」任せにしていいのか。尖閣や台湾有事が勃発した場合、自衛隊配備がないために石垣島の守りが後手に回ることがあっても「住民投票で決めたことだから」と、誰も責任を取らないことになりかねない。米軍普天間飛行場の辺野古移設問題も全く同じ構図であり、こと安全保障に関しては、時の「民意」が最善の選択をもたらすとは限らない。
 最終的には民主的な選挙で選ばれた政治家が全責任を負うのが日本の政治システムであり、石垣市議会与党が「陸自配備に対する民意は市長選や市議選で示された」と指摘するのは説得力がある。
 今回の住民投票条例には別の問題点もある。賛否を問う対象を石垣島の「平得大俣地区」に限定しているために、たとえ反対多数になっても、島内の違う場所であれば問題ないという解釈の余地を残すことだ。住民投票がエンドレスに繰り返される可能性も排除できない。
 陸自配備には賛成だが、現在の予定地には反対という住民を取り込むための設問だと思われるが、反対派の戦略だけが強調され、不自然な感は否めない。
 特別委員会では、遅くとも5月上旬までの結論を目指している。市議会で多数を占める与党が住民投票には否定的だけに、住民投票の実現に向けたハードルは依然として高いようだ。
 7月には参院選があり、陸自配備問題も争点の一つになる可能性がある。駐屯地建設工事は3月から本格化しているが、今後は残る予定地である市有地の売却が市議会で審議される。住民投票に訴えなくても、その都度、議会を通じて住民の意思は反映できるのではないか。

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