【視点】支持される野党の「条件」

 希望の党の小池百合子代表(東京都知事)が辞任の意向を表明した。自公に代わる政権交代の受け皿を目指して9月に党代表に就任したが、わずか2カ月足らずでの退陣となる。一時は国民的な期待を一身に集めた小池氏が国政から距離を置く姿勢を示したことは、希望の党の党勢にも影響を与えかねず、野党の混迷に一層拍車が掛かる可能性がある。
 巨大与党の自公に対し、野党は小勢力が乱立する状況で、しかも野党間に政策の大きな隔たりがあり、軸となる勢力が育たない。米国のような2大政党制を期待する国民も多いが、当分は、自民党党内の有力者が総裁選で競い合う「疑似政権交代」の可能性しかないようだ。
 小池氏が失敗した要因は準備不足に尽きる。衆院選まで時間がない中で、練り上げた公約や魅力ある候補者を提示できず、民進党の丸のみで乗り切ろうとした姿勢が失望につながった。自公に対する「保守・中道」の対立軸という小池氏の目標は妥当なものだったが、希望の党が受け皿になるのは時期尚早だったということである。
 立憲民主党が野党第一党になったが、安全保障政策で安保法廃止を訴えるなど、共産党や社民党との相違が今ひとつ不鮮明で、今後、どこまで党勢を拡大できるかは未知数だ。
 野党の混迷が続くことは、沖縄にとっても望ましい状況ではない。
 10月の衆院選でも米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点の一つになったが、移設に反対する「反自公」票はほとんど、極端な「反基地」を掲げる共産党や社民党支持に向かった。
 結果として選挙区では共産党や社民党の候補が勝ち抜き、選挙後、辺野古移設問題にとどまらず、内政、外構のさまざまな課題で自公政権と鋭く対立している。一般的に言われる「沖縄対本土」の対立とは、実は「自公対共産・社民」の対立にほかならず、両者の妥協点は、ほとんど見いだせない。もし沖縄で「保守・中道」の対抗軸が育っていれば、違った展開になっていたかも知れない。
 自民党の政治家として長く活動してきた翁長雄志知事も「オール沖縄」を名乗り、もともと自公に対する保守・中道の対抗軸として期待を集めたはずだが、この3年、ほとんど独自色を発揮できていない。後ろ盾となる勢力が「革新」政党しかないためで、自民党からは「翁長革新県政」と揶揄されるに至っている。
 本土、沖縄にかかわりなく、国民に支持される野党をつくるには、従来の政権とは異なる明確な世界観に基づいた公約を示し、力量のある候補者を掘り起こさなくてはならない。
 公約はデスクワークで生まれるものではなく、それは日々の生活から切実な実感として沸き上がる国民の声だ。声なき声を拾うためにも、政治家は常に地域と接点を持たなくてはならない。
 実業家から転身した米国のトランプ大統領のように、政治経験の有無は必ずしも抜きん出た政治家の条件ではない。さまざまな分野から、候補者をうまくスカウトする仕組みづくりも野党の課題になってくる。これも、まさに希望の党の「失敗」を教訓にすべき点だ。

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