【視点】「辺野古」で問われる民意と信念のギャップ

 辺野古を巡り、衆院補選では元沖縄担当相の島尻安伊子氏が「きれいな海を埋め立てるのに大賛成という人はいないが、周辺住民の危険性を除去するのは政治の責任だ」と容認を明言した。
 基地反対の訴えは、平和を何よりも尊重する沖縄では県民の共感を得やすい。しかし政治家が有権者の耳あたりのいい言葉だけを乱発し、あえて厳しい現実に言及する気概をなくせば、それはポピュリズム(大衆迎合主義)の政治にほかならない。長い目で見れば、決して沖縄のためにはならないだろう。憲法改正に関しても同じことが言える。
 この問題は民主主義社会では万国共通である。米国のジョン・F・ケネディ大統領(1917~63)が就任前の若手政治家時代に執筆した「勇気ある人々」という著書は、有権者の意思に逆らって信念を貫いた政治家たちを紹介し、再評価のスポットを当てた。政治家に対し、単に有権者の時の多数意思に従うよう求めるのは「震度計になれと言うようなものだ」と批判する。
 参院選では、いずれにせよ高良氏の優位は動かなかったかも知れない。しかし、民意を尊重するだけでなく、自ら民意を形成するために積極的に動くのもリーダーの役割だ。沖縄で辺野古移設に対する悪いイメージが蔓延してしまったのも、正面から反対派に反論してこなかった保守派の優柔不断に大きな原因がありそうだ。
 ただケネディは、民意を無視して信念を押し通すことと、民主主義との緊張関係を当然ながら見抜いていた。その上で、真の民主主義とは「民衆は、ただ見事に、そして忠実に自分たちの考えを代弁してくれる人物を選ぶだけでなく、良心に従った判断を実行に移そうとする人物を選んでくれるという信頼」であると述べている(宮本喜一訳、英治出版)。
 14年の知事選で翁長氏と仲井真弘知事の票差は約10万票だった。昨年の知事選で辺野古反対の玉城デニー氏と佐喜真淳元宜野湾市長の差は約8万票、今回の参院選で高良氏と安里氏の差は約6万票である。投票率の問題もあるが「オール沖縄」旋風が吹き荒れた当初に比べ、辺野古反対派のアドバンデージは少しずつ、確実に縮小している。
 政治家はもちろん、多くの人たちがそれぞれの立場で辺野古移設の必要性を粘り強く訴え続ければ、世論が変化していく可能性は十分に考えられるだろう。

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