【視点】昭和天皇の苦悩うかがえる新資料

 弱肉強食の帝国主義時代や、戦後の冷戦期を国政の中心で見つめ続けてきた人物ならではのリアリズムと心痛が感じられる。
 70年余の平和を享受してきたとはいえ、現在の日本も、四方から迫る新たな脅威への対応を迫られている状況は変わらない。国の独立と軍事力の関係、日本の再軍備を禁止した憲法9条と、沖縄の米軍基地負担がセットになっている現実を改めて考えずにはいられない。
 日本が戦争に至った理由について昭和天皇は、下位の人間が上位をしのいで実権を握る「下剋上」という言葉を使い、当時の軍部を批判した。さまざまな証言をつなぎ合わせ、膨大な犠牲と敗戦に至った経緯を再検証する作業は欠かせない。
 再三退位を検討した形跡や、戦争に対する反省の念、かつての首相だった東条英機、近衛文麿といった政治家の人物評など、従来も研究書などで知られていたが、今回初めて昭和天皇の肉声として明らかになった事実は多い。
 時代は昭和から平成を経て令和へと移った。時代の変遷を経て冷静に見つめ直すことで、改めて再発見できる歴史もありそうだ。

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