【視点】デジタル化 離島振興の追い風に

 政府が経済財政運営の指針として月内に決定する「骨太方針」の原案が8日公表された。新型コロナの経験を踏まえた「新たな日常」を見据え、デジタル化の推進や、東京一極集中の是正が大きな柱だ。
 新型コロナの感染拡大防止に向け、教育や医療などのオンライン化や、テレワーク定着などの取り組みを盛り込んだ。
 離島県である沖縄や、離島の離島である八重山などにとって、こうした取り組みは新型コロナ対策としてだけでなく、離島にいながら高い生活水準を享受するための追い風になる。国の方向性とうまく歩調を合わせ、離島振興に向け先進的な事業の導入に努めたい。
 「骨太方針」原案では、新型コロナ対策の受給申請手続きや支給作業の一部で生じた遅れや混乱に言及し、デジタル化、オンライン化が「特に行政分野で遅れていることが明らかになった」と反省した。
 感染拡大で東京一極集中のリスクが認識されたとして、街全体をITでつなぐスマートシティや、都市部と地方をまたいだ「2地域居住・就労」を推進する方針を打ち出した。
 離島住民にとって、沖縄本島や本土との人流・物流のコスト負担は重く、都市部との生活格差の一因ともなる。その地理的不利性を解消する決め手となりそうなのが、オンライン化の推進だ。
 遠隔医療が本格的に実用化されれば、離島で高度な医療を受ける可能性が広がる。遠隔授業で子どもたちに大都市並みの教育水準を確保すれば、島を背負う有為な人材育成につなげることができる。
 大都市でも、離島でも同じレベルで仕事ができるようになれば、離島移住へのハードルが低くなる。豊かな自然環境に憧れて多くの人たちが島に向かうだろう。過疎化の問題も解決へ大きく前進するはずだ。
 「骨太方針」原案では「感染症への対応でテレワークがもたらした新たな働き方やワークライフバランスの流れを最大限生かす」としている。広い視野に立てば、テレワークの推進も離島で大都市と同じレベルの仕事を可能にする仕組みの一つだ。
 デジタル化推進や東京一極集中の是正は働き方改革にも影響を与える。多様なツールによる多様な働き方を容認することで、一人ひとりが生きがいを持てる仕事のあり方を見出せるかもしれない。
 原案では、新型コロナ感染拡大防止策として「戦略的に検査能力を拡充する」と明記した。無症状の濃厚接触者などや感染している可能性が高い人について、PCR検査を幅広く行う方針を示した。
 東京では再び感染拡大傾向が顕著になり、夏の観光シーズンを迎える沖縄本島や八重山へのウイルス侵入リスクも高まる。国の方針に沿う形で、県や石垣市でも検査体制の拡充を積極的に進める必要がある。
 少子化対策に関し原案では、男性向けの産後休業制度の創設も検討し、取得しやすい環境を整えるとした。少子高齢化は新型コロナと同様の国難であるという危機感を持つべきだ。
 公明党は9日の政調全体会議で原案を論議したが、防災・減災に関する記述が昨年と全く同じだとして紛糾し、了承を見送った。石田祝稔政調会長は「ばかにしている。一字一句、同じ文章を載せる神経が分からない」と憤った。
 前年度の方針を機械的に踏襲するだけでは、政策の実現に向けた本気度を疑われかねない。政策を練り上げる際には、隅々まで神経を行き届かせてほしい。

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