【視点】検査拡大路線、沖縄では破綻

 「疑わしい人すべてに、検査、検査、検査だ」。3月、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向けて検査の徹底を訴えたのは、WHО(世界保健機関)のテドロス事務局長だ。
 だが玉城デニー知事は今月7日、PCR検査の対象を見直すと発表した。重症化リスクがある人を除き、無症状者は濃厚接触者であってもPCR検査はしない。「緊急的な措置」としているが、全国で当然のように推し進められてきた「検査拡大路線」が、沖縄では破綻してしまったのだ。
 背景には、感染者の急増に検査機関や医療機関の能力が追い付かなくなってきたことがある。
 検査件数は1日2000件を超え、多い日は100人以上の陽性者が出ている。検査すればするほど陽性者が増え、医療機関の逼迫(ひっぱく)が深刻化する悪循環に陥ってしまった。
 従来のPCR検査は感染者を発見することが第一の目的だった。今後は検査対象を有症状者や重症化リスクが高い高齢者などに絞り、貴重な医療資源を重症者対応に集中させることになる。
 事実上、ある程度の感染拡大はやむを得ないと観念し、人命救助のほうに注力するというギリギリの一線まで、県が追い詰められたことを示している。
 「検査拡大路線」は、感染拡大に歯止めを掛ける有効な政策として、テレビのワイドショーでも当然のように主張する論客が多い。「いつでも、どこでも、誰でも」PCR検査が受けられる体制が理想とされる。だが、沖縄では理想と現実が乖離(かいり)していた。
 農高接触者全員にPCR検査を実施する従来の手法が有効性を保っているのは、本島ではなく離島だ。本島と違い、市中感染が拡大している状況ではないから、数少ない陽性者をあぶり出し、隔離することで感染源をシャットアウトできる。八重山では従来通り、濃厚接触者の全員検査を行う方向だ。
 「検査拡大路線」は、このように狭い地域なら現実的だが、県レベル、あるいは一国レベルとなると、なかなか難しくなる。この路線が妥当かどうかは、その地域の範囲の広さに加え、地域の流行レベルと、医療・検査機関の能力によって判断すべきであるようだ。
 流行が一定以上のレベルに拡大すると、検査の拡大は、医療・検査機関の逼迫をさらに助長するというデメリットのほうが大きくなるようなのだ。その意味でも、沖縄は貴重なテストケースになったように見える。
 感染の有無を確認するには抗原検査もあるが、PCR検査に比べ精度が低く、感染していても陰性となる可能性が高まる。
 それにしても沖縄の感染拡大は予想をはるかに上回る危機的なペースで進んだ。4月ごろの「第1波」の際は1日の新規感染者数が多くて10数人程度のレベルだったから、現在は単純計算でも10倍以上の大波に襲われたことになる。
 離島の八重山、宮古でもクラスター(感染者集団)が発生し、宮古島では県内離島で初の死者が出た。被害は「第1波」の比ではない。
 県は9日から、重症者の一歩手前である「中等症」の人数の発表も始めた。重症者が今後増加する可能性を示す「黄信号」である。医療崩壊だけは、何としても食い止めなくてはならない。

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