【青年弁論大会】母校から見る民族の精神

 この言葉により、伊波を冷酷だと思う方もいるようですが、私はそうとは思いません。
 なぜなら伊波は、日本と琉球は同じ祖先を持つという日琉同祖論を提唱していました。有形・無形を含めた沖縄の文化財は、日本人と沖縄の人々を目に見える形としてつなぐ、民族の象徴であると考えていたと思うのです。ですから、失われた文化財に想いを馳(は)せたその言葉は、敗戦により未来がわからなくなってしまった沖縄を案じた、伊波なりの故郷への愛だったと思うのです。
 そのように、沖縄を誰よりも愛し、憂いた伊波が残した研究結果によって、沖縄の文化財は祖先を知るためだけのものではなく、古代より残る日本民族の考え方や感性などを示す「民族の精神」を残していると私は考えます。
 ですから沖縄に目を向けるとき、つい目先の問題ばかりを見がちですが、今後は日本民族にとっての沖縄の役割を、地政学的視点のみだけでなく、民族の精神という視点で、歴史や文化を紐解くことも大切になると思います。
 歴史や文化とは、民族の記憶であり記録です。どうかそれらを疎かにせず何百年という先をも見据えた視点で、沖縄を、そして我が国を見ていただければと思いますし、私も歴史を学んできた者として、歴史を紐解き、先輩方のように民族の精神を後世へとつないでいきたいと思います。

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