【視点】「表現の自由」真の危機はどこに

 覆面禁止法という名称からして、不謹慎だが思わず笑ってしまうかも知れない。民主化デモをここまで露骨に抑圧するのか。香港の民主主義が大きく後退したことを世界に示した悪法だ。
 香港政府は5日、デモ参加者がマスクなどで顔を覆うことを禁じる覆面禁止法を施行した。行政長官が緊急時に立法会(議会)の手続きを経ずに必要規則を設けられる「緊急状況規則条例」を、1997年の香港返還後で初めて発動。立法会(議会)を通さずに一方的に同法を制定した。
 顔を隠せなくなることで、デモ参加者が委縮することを狙った立法であることは明らかだ。
 仮に日本で、政府が覆面禁止法を制定すればどうなるか。憲法で定められた「表現の自由」や「思想・良心の自由」などに抵触し、法律そのものが無効になる可能性が高い。日本ではそもそも、国、自治体を問わず、人権にかかわる法律や条例を、議会を通さずに制定することは認められていない。
 自由や民主主義は戦後日本の経済発展を支える思想的、制度的な土台となってきた。今や国民にとっては空気や水のように当然の存在かも知れない。しかし、世界で自由や民主主義を標榜しているのは先進国を中心とする一部に過ぎず、中国を代表格に、独裁や統制経済を継続している大国もまた多い。
 世界で民主主義が後退し、民主国家が独裁国家に包囲される事態が進行すれば、日本だけ平和や繁栄を享受し続けることは困難になる。そして民主主義は拡大するどころか、現に香港で窒息しようとしている。日本人はもっと、自由や民主主義の価値について関心を持つべきだ。
 香港の問題と時を同じくして、日本国内でも表現の自由を巡る論議が活発化している。表現の自由を守るよう求める人たちの声は尊重されるべきだが、こちらは、どうもおかしい。

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