【視点】勝敗のカギ握る〝無党派層取り込み〟

 知事選は27日から「3日攻防」に入る。報道機関などの各種世論調査を見ると、翁長雄志知事の後継者であることを前面に打ち出す玉城デニー氏(58)が優勢で、自民、公明、維新が推す佐喜真淳氏(54)が猛追する展開になっていると見られる。勝利に向けた最後のカギは無党派層が握りそうだ。
 2014年の前回知事選では、自民党県連幹事長などを歴任し、保守本流を自認する翁長雄志知事と、共産、社民などの革新勢力が手を握り「オール沖縄」を構築した。米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止という一点に一致点を見出した保革共同体だ。
 これによって翁長氏は保守、革新の双方に支持される形になり、当時の仲井真弘多知事に10万票の大差をつけ初当選した。
 しかし約4年経った現在は大きく状況が異なる。当時自由投票だった公明や、知事候補の一人だった下地幹郎衆院議員の維新が自民と連携し、佐喜真氏支持を決定。保守中道勢力の再結集が進んだ。さらに翁長氏が死去したことで「オール沖縄」から「保守」を代表する顔が失われた。
 このため選挙戦は、保守中道勢力を支持基盤とする佐喜真氏と、革新勢力を支持基盤とする玉城氏の対決という構図になっている。この状況を見ると「オール沖縄」は事実上瓦解したと見てよいのではないか。
 玉城氏は翁長氏の死去、遺された録音の〝後継指名〟によって急きょ、知事候補に浮上。準備態勢に出遅れがあったものの、タレント活動で培った高い知名度を武器に、短期間で有権者に浸透した。世論調査によると、大票田の那覇などで支持拡大が進んでいると見られる。ただ玉城氏の関係者は「全く安心していない」と気を緩めない。
 佐喜真氏は当初、自民、公明、維新の基礎票で優位に立つと見られていたが、無党派層の取り込みで苦戦しているようだ。終盤に入り、豊富な行政経験や、安倍政権との良好な関係をアピールポイントに、組織力で追い上げを図っている。投票日前日の29日に台風が接近する見通しのため、名護市長選のように、期日前投票の大量動員で逃げ切る戦略も現実味を帯びる。佐喜真氏の関係者は「ようやく相手の背中が見えてきた」と意気込む。
 無党派層の取り込みはイメージ戦略が有効とされる。佐喜真陣営には、国民的人気の高い自民党筆頭副幹事長の小泉進次郎衆院議員が3回にわたって応援に来る。玉城陣営は、翁長氏の写真やイラストをポスター、チラシに入れたり、選挙スローガンに翁長氏のそれを取り入れるなど、翁長氏と玉城氏を巧みにだぶらせる。
 各陣営とも支持基盤固めはほぼ終えているため、無党派層の取り込みに勝負を懸けているはずだ。プロパガンダ合戦のような感じがしなくもないが、有権者は透徹した目を持ちたい。
 佐喜真氏は集会で仲井真弘多前知事が沖縄振興に果たした功績をたびたび称賛している。当選すれば佐喜真氏の県政は仲井真県政の衣鉢を継ぐものになるだろう。
 玉城氏は自他共に認める翁長氏の後継者であり、当選すれば玉城氏の県政は実質的に翁長県政の2期目となるはずだ。
 米軍基地問題、経済振興、福祉など、沖縄を取り巻く課題は本土のそれより格段に厳しい。求められているのはイメージ先行型ではなく、実行力、仕事力のある知事だ。各候補の論戦をよく聞き、政策を吟味した上で投票したい。

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