【視点】初の女性首相 迅速な政策実現を
内憂外患とも呼ぶべき危機的状況の日本で、初の女性首相が誕生した。世論の期待は大きいが、山積する課題にどう挑むのか、高市早苗首相は就任早々手腕を試される。就任会見では「強い日本経済を作り上げ、外交安全保障で日本の国益を守り抜く」と述べた。スピード感をもって政策実現にまい進してほしい。
最重要課題は経済対策だ。首相はガソリン暫定税率の速やかな廃止と、いわゆる「年収103万円の壁」の引き上げを挙げ、国民の手取りを増やし会計の負担を減らす考えを示した。
日本は本格的なインフレ時代に入りつつあり、低所得者層ほど家計への打撃が厳しい。離島県である沖縄では輸送コストも加算され、住民生活は一層厳しさを増す。自民、維新が連立合意で打ち出した負担軽減策は多くの国民、県民から歓迎されるだろう。
ただ日本経済は少子高齢化などの影響で先細りの傾向が強く、2025年のGDP(国内総生産)はインドにも抜かれて世界5位に沈む見通しだ。物価高への対症療法だけではなく、経済の抜本的な強化策に取り組まなくてはならない。
首相は「成長戦略の肝は危機管理投資」と強調した。具体的に安全保障、防災、感染症対策などの分野で先端技術の育成を進めてもらいたい。
安保関連3文書を前倒しで改定し、ドローンやサイバー攻撃など、近代戦に対応できる体制を整える方針も表明した。日本周辺の中露朝という軍事大国の脅威がかつてなく増大する中、沖縄は地理的な最前線に立たされている。実効性ある改定を求めたい。
高市内閣の発足を受け、玉城デニー知事は首相に沖縄の基地負担軽減に向けた対話を求め、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対について「真摯に私の意見を聞いてほしい」と注文を付けた。
安保関連3文書の前倒し改定にも「一定の緊張感をもって注視する必要がある」と警戒した。
しかし、これまで県政の辺野古移設反対にこだわる姿勢が、政府と沖縄の対話を妨げてきた。結果的に日米で合意した嘉手納以南の米軍基地返還も進まないジレンマが続いている。知事の政治的立場を考えればやむを得ないのかも知れないが、今は沖縄にこそ柔軟な発想が求められるタイミングだ。
安全保障の強化が沖縄の基地負担増につながるというステレオタイプの考え方にも問題がある。むしろ安全保障の強化こそ県民生活の基盤だからだ。
玉城県政は基地負担の軽減と同時に、抑止力の維持にも目配りする常識的な考え方に立脚して政府との協議を進めてほしい。