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【視点】対中依存 やはり危うい

2025/11/18

台湾有事は安全保障関連法で集団的自衛権の行使が可能となる存立危機事態になり得る。高市早苗首相のこの国会答弁は、沖縄、特に台湾と目の鼻の先にある八重山住民にとって、まぎれもない事実として実感できる。

首相答弁に反発した中国政府は国民に日本への渡航自粛を呼び掛けるなど、経済的な圧力を強め始めた。

沖縄の産業は観光を基軸としており、現在でも多数の中国人観光客を受け入れている。
だが今回の中国の対応を見て、多くの県民が改めて「チャイナリスク」を実感したのではないか。経済的な対中依存はやはり危うい。

八重山では国、県、3市町が台湾有事を見据えた住民避難計画の検討を本格化させている。「台湾有事は日本有事」という故・安倍晋三元首相の発言は、住民にとって当然の事実である。
中国は台湾や沖縄周辺で頻繁に軍事演習を繰り返している。「尖閣諸島は台湾の一部」という身勝手な理屈から、石垣市の行政区域である尖閣諸島周辺での領海侵入も日常化している。
そして今回の首相答弁に対する激しい反発を見れば、中国が軍事力の行使をテコに台湾や沖縄周辺での覇権拡大を目指していることは、残念ながら誰の目にも明らかだ。この国は南シナ海でも、平然と実力行使による領土拡大を進めている。

中国が2010年、世界第2位の経済大国に急成長してから、意に添わぬ他国を従わせるため貿易を制限したり、観光客を止めたりという振る舞いも目立つようになった。
いわば精神的に未熟な子どもに強大なパワーを持たせたようなもので、世界中が中国に振り回されている。とりわけ隣国の日本、その中でも中国に近い沖縄、沖縄の中でも台湾に近く、尖閣諸島を抱える八重山が中国の脅威をダイレクトに受ける。

日本としては中国のわがままを押しとどめるために抑止力の向上を図るべきだが、同時に中国の要求をはねつけられるよう、経済的な対中依存を減らす努力を続けるべきだ。
とはいえ、身の回りの電化製品などはことごとく中国製というのも現実である。中国なしに経済は成り立たない。その現実を前提にしつつ、要はそれでも中国からのヒト、モノの供給が止まった時にどうするか。「経済安全保障」の観点からリスク管理を考え直す必要がある。

沖縄は県政が中国からの観光客受け入れに積極的だ。政治的なリスクを考えると、中国からの誘客、投資の呼び込み、あるいは対中投資は慎重に考えるべきだ。

玉城デニー知事は首相の国会答弁について問われ「日中共同声明の趣旨に沿った互恵的な発展を見据え、平和的な外交、対話による信頼関係を構築してほしい」と要望した。
中国の薛剣(せつ・けん)駐大阪総領事がXに投稿した首相への暴言には言及を避けた。

批判すべきことを批判しない。こうした対中融和姿勢は、長い目で見て沖縄のためにならないのではないか。