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【視点】常識的に有り得ない疑惑

2026/03/12

辺野古移設後も、米国は普天間飛行場を返還しないのか。最近、メディアを中心に、こんな疑惑が盛んに取り沙汰されている。

口火を切ったのは2月の県紙だ。米国務省が2025年9月に出した文書で、辺野古に建設される滑走路は能力が不足するため、代替となる「長い滑走路」が選定されるまで普天間飛行場は返還されないと明記している、と報じた。

日米は2013年に合意した統合計画で、米軍普天間飛行場の返還条件として辺野古移設など8項目を確認した。つまり辺野古移設以外にも条件がある。

米国務省の文書で言及されているのは、このうち「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」という項目と見られる。

普天間飛行場の滑走路は2740㍍の長さがあるが、辺野古に建設される滑走路は1800㍍と短い。この項目は、米軍が緊急時には長い滑走路を持つ民間施設(空港)を使用する可能性があり、日本側がそのための環境整備を行うという趣旨だと解釈されている。

小泉進次郎防衛相は記者会見で、民間施設の使用について「実際に緊急事態が発生した場合の対応」とした上で「特定公共施設利用法など、必要な法的枠組みは既に整っており、事態に応じて適切な調整を図ることが可能。この条件が満たされないことで、辺野古への移設完了後も普天間飛行場が返還されないなどということは全くない」と疑惑を否定した。

普天間飛行場の8項目の返還条件を巡っては、2017年にも当時の稲田朋美防衛相が国会答弁で言及。主要メディアや「オール沖縄」勢力の政治家を中心に「辺野古移設が完了しても普天間飛行場は返還されない」という主張が広がった。

この時も返還条件のうち、民間施設の使用に関する項目が問題視された。今、9年前と全く同じ騒動が蒸し返されている。

今回の米国務省の文書は、日米が合意した統合計画の内容を再確認する内容で、米側がここに来て普天間飛行場返還に関し、新たな条件を持ち出したようには見えない。

米軍の担当者が折に触れ、軍事的な観点からは辺野古の代替施設より現在の普天間飛行場のほうが使い勝手がいいとの考えを表明してきたのは事実である。

最近も米海兵隊の中佐が、辺野古移設後も普天間飛行場を「キープすべき」との論文を発表し、物議をかもした。

ただ米軍も日本の自衛隊にも、シビリアンコントロールの原則が存在する。決定権を持つのは政治であり、現場の軍人ではない。日米の歴代政権が辺野古移設による普天間飛行場の返還合意を繰り返し確認しており、現場の軍人の意見を過大評価する意味はない。
常識的に考えて、辺野古移設完了後も米国が普天間飛行場を返還しなければ、日米関係は破綻する。米側がそれを理解していないことは有り得ない。

それより、なぜこのタイミングで「辺野古移設が完了しても普天間飛行場は返還されない」という主張が再び頭をもたげてきたのか。

沖縄の主要選挙では最近、辺野古移設が主要争点にならなくなった。そんな政治状況の中で秋の知事選を迎える。辺野古移設問題に再び火をつけたい。どこかにそんな思惑はないのか。