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【視点】「有事」の懸念高まる沖縄

2025/12/18

沖縄を取り巻く安全保障の状況は一段階、フェーズが上がったのではないか。最近の中国の言動を見ていると、そんな懸念を抱かざるを得ない。

共同通信によると、中ロの爆撃機が今月12日、日本周辺を飛行したことについて、中国国防大学の関係者が「琉球を囲んだ」「歴史的に残された琉球問題を直視し、解決する段階に入った」などと香港フェニックステレビで解説した。
6~12日には中国空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を抜けて太平洋に向かい、沖縄周辺では空自機が中国戦闘機からレーダー照射を受けた。

中国政府は国際社会の場で沖縄県民を「先住民族」と呼称し始めた。中国メディアは、沖縄が日本ではないかのような宣伝を活発化させている。

台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁への対抗措置との見方もあるが、こうした中国の動きは、国会答弁前から徐々に目立ち始めていたものだ。国会答弁が直接的な原因であるとは思えない。

中国の言動は誰が見ても、沖縄に対する領土的野心を疑わせるに十分である。むしろ首相の国会答弁を契機に、中国の下心が一気に顕在化しつつあるのではないか。

八重山では台湾有事の際、先島諸島も中国の攻撃対象になるのではという疑念が広がっている。沖縄の主権を曖昧にしようとする中国の動きは、そんな疑いをますます増幅させる。私たちは台湾有事だけでなく「沖縄有事」をも心配しなければならないのかも知れない。

日本としてはまず、沖縄に基地を置く米国と連携し、沖縄での抑止力を確固としたものにする必要がある。
石垣市では毎年、日米共同訓練が行われており、これまで住民生活に何らかの影響が出た事例はない。今後とも住民生活に十分配慮した上で、自衛隊員の練度を高める努力を続けるべきだ。

住民としても日々重圧の下で訓練に励む隊員の任務を理解し、できる限り協力したい。自衛隊の活動に反対する人たちの政治活動は自由だが、宮古島で起きたような過激な妨害活動はやめるべきだ。

沖縄の日本帰属を疑問視する中国の情報戦に対し、木原稔官房長官は「コメントする必要はない。沖縄は我が国の領土であることに何の疑いもない」と述べた。政府としては妥当な対応だが、当事者である沖縄は話が別だ。
中国との友好は友好として、県民への不当な言いがかりに対しては県として明確に反論し、国際社会に誤解が広がらないよう努めるべきである。

しかし県民が先住民族であるとする中国の主張について、玉城デニー知事は県議会で、県庁内で議論したことがないとして「申し上げることはない」と述べた。
尖閣諸島周辺での中国艦船による領海侵入も、国が解決すべき問題だとして中国に抗議していない。県政トップの態度がこれでいいのだろうか。

県議会で知事の態度に対し「中国の認知戦に利用される」との指摘が出たのは当然である。