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【視点】日米初会談 上々の滑り出しに

2025/10/30

高市早苗首相は訪日したトランプ米大統領と初めて対面で会談し「日米同盟の新たな黄金時代」に向けて経済や安全保障での連携強化を確認した。

興味深かったのは会談冒頭、トランプ氏が「いつでも、どんな質問でも、日本にとって何か必要なことがあれば何でも言ってほしい」と最大限のリップサービスを示したことだ。石破茂前首相との会談では、このような場面はなかった。

高市氏との会談でトランプ氏は、第一次政権時に親しかった安倍晋三元首相の名前を繰り返し持ち出し「彼は偉大な友人で、彼の死はショックだった。安倍氏からあなたのことはよく聞いており(首相就任を)安倍氏も喜んでいるだろう」と語った。

日本では、高市首相は安倍氏の後継者と位置付けられている。もちろんトランプ氏はそのことを十分に知っており、会談前から高市氏に好意的だったことは想像に難くない。
高市首相は、安倍氏とトランプ氏の会談で通訳を務め、トランプ氏のお気に入りでもあった外務省の高尾直日米地位協定室長を引き続き通訳に起用。トランプ氏に、安倍氏が生前使っていたゴルフのパターを贈呈するなど、安倍氏の「レガシー」継承に腐心した。

トランプ氏は首脳会談後、安倍氏の妻、昭恵氏とも面会した。3年前に亡くなった安倍氏の存在感が随所に際立った。今回の首脳会談で影の主役は、安倍氏だったと言えなくもない。

日米間では関税交渉が決着し、首脳間で論議が必要な大きな外交的課題はないとの認識のようで、両首脳の個人的関係がどこまで深まるかが焦点だった。

高市氏はトランプ氏をノーベル平和賞に推薦する意向を伝達。トランプ氏は原子力空母ジョージ・ワシントンでの演説で高市氏を「初の女性首相で、勝者」とたたえた。高市政権で、対米関係は上々の滑り出しを見せたと言える。

沖縄からは米国に対し、米軍基地の負担軽減や日米地位協定の改定を求める声が出ている。石破前首相も就任前までは地位協定改定に意欲的な姿勢を示していた。
とはいえ中国の軍事的脅威が高まる中、米軍基地問題に関し、従来の合意の枠組みを越えた取り組みを早急に政治日程に上げるのは難しい。今や沖縄の基地負担軽減を考える上で、最大の障害は中国だ。

日米両首脳が対面での初の会談で、対中抑止に向けて台湾海峡の平和と安定などを最優先に訴えたのは妥当だ。

米軍基地問題では、米軍普天間飛行場の辺野古移設を含む日米合意を着実に履行し、その後、負担軽減の新たなステージを検討することが現実的である。

首脳会談で尖閣諸島(石垣市)についての言及はなかったが、両首脳は「力による一方的な現状変更の試みに反対する」と確認した。尖閣諸島に日米安保条約が適用されることは日本とトランプ政権で以前にも確認しており、あえてまた持ち出す必要はないとの判断だろう。