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【視点】中国の言動 県民も座視できぬ

2025/11/21

台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を巡って日中関係の緊張が続く中、中国政府の対日「報復」は沖縄まで波及してきた。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報が社説を掲載するなど、沖縄の日本帰属を疑問視する言動が活発化している。

尖閣諸島(石垣市)周辺海域では、沖縄の漁業者が中国艦船の執拗な領海侵入に悩まされているところだ。それに加え、中国側のこの言動は沖縄県民としても到底、座視できない。

中国はチベットやウイグルの人権弾圧で国際社会から批判されているが、沖縄が日本に帰属することを否定するような言動も、それに連なる。沖縄県民の日本人としての人権を公然と否定しているに等しい。
玉城デニー知事は尖閣諸島問題でも中国に直接抗議したことはないが、今回の行き過ぎた言動に対しては、当事者として明確に抗議の意を表明したほうがいいのではないか。

この問題が深刻なのは、沖縄が日本に帰属することを否定するような中国の言動は、今に始まったことではないからだ。
習近平国家主席が突如、沖縄と中国との関係に言及し、波紋を広げた。国連では中国の代表が県民を「先住民」と決めつけ、差別をやめるよう促した。琉球独立論を主張する学者が訪中し、中国の学者と交流する動きも伝えられている。

中国は尖閣諸島を「台湾に付属する島々」と位置付けて領有権を主張しているが、一連の動きは、沖縄全体に対しても同様の主張を始める布石ではないかとの疑念を生む。

今回の動きは高市首相の国会答弁に対する反発という側面が強調されているが、日中関係の悪化を好機として、一気にキャンペーンを拡大させているという見方が正しい。

日本が台湾有事に介入するなら、中国は対抗策として沖縄の領有権問題を持ち出すという戦略もあろう。だが首相答弁を巡る対立が沈静化しても、沖縄をうかがう中国の動きが収まることはないだろう。中国の狙いは沖縄と本土の分断だ。台湾や尖閣を含むこの地域の軍事的覇権を確立するため、対中最前線として米軍や自衛隊基地を抱え、地理的な要衝である沖縄の国際的地位を不安定化させたい。
米中という軍事大国の思惑が沖縄を舞台に渦巻いている。沖縄県民は常に平和を希求しているが、生々しい国際社会の現実も意識しなくてはならない。

県民として大事なのは、古くからの中国との友好や交流は大切にしつつ、中国共産党政権とは一線を引くことだ。沖縄は、このような政権と信頼関係は築けない。

首相答弁への報復として日本への渡航自粛を呼び掛けた中国の対応を見ても分かる通り、中国人観光客への経済的依存も縮小しなくてはならない。台湾有事の抑止という意味でも、むしろ台湾との経済交流拡大に舵を切ったほうがいいだろう。