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沖縄に国立自然史博物館を 県民会議が発足、参加呼び掛け

2025/12/12

国立沖縄自然史博物館の誘致に向けた県民会議の結成式が行われた=11日午後、県立博物館・美術館3階講堂

国立沖縄自然史博物館の県内設立を目指す「国立沖縄自然史博物館誘致県民会議」の結成式と記念シンポジウムが11日、那覇市の県立博物館・美術館で開かれた。県や県議会、経済界、学術関係者、県民らが出席し、誘致実現に向けた運動が本格的に始動した。県民会議は、来年6月に政府がまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」への明記を最大の目標に掲げ、機運を高めていく方針。

式典で中川京貴県議会議長は、2016年に日本学術会議が沖縄への設立を提唱してから9年が経ったと振り返り「多様な生態系を持つ沖縄は東・東南アジアを含め自然史博物館の空白地帯。ここに国立館を置く意義は極めて大きい」と強調した。県議会では全議員参加の誘致議連を結成し、知事への要請を行うなど体制を固めてきた。「復帰60年となる2032年の開館を目指し、県民とともに実現したい」と訴えた。

大城肇副知事は、自然史博物館の研究・標本保全・教育の三つの機能を説明し「生物多様性の保全や災害メカニズムの解明、技術開発にもつながり、未来を拓く力になる」と期待した。

県は2014年の県内初シンポ開催以降、国への要請などの取り組みを重ねている。「会議の発足は誘致・設立を実現するための大きな力になる」と強調した。

趣旨説明に立った呉屋宏・県議会誘致議連幹事長は、来年6月を「明確な期限」と位置づけ、骨太方針への記載を目指す考えを示した。「沖縄が一つにならなければ実現しない。短期間で県民の運動を一気に高めたい」と述べ、広く企業、団体の参加を呼び掛けた。県民会議には49団体が参加しており、年末までに150団体を目標とする。

県関係国会議員11人も顧問に就任する予定で、国会にて直接働きかけるの支援体制も整える。

共同代表には、中川京貴氏(県議会議長)、西田睦氏(前琉球大学学長・東京大学名誉教授)、浜田京介氏(沖縄観光コンベンションビューロー会長)が選任された。

国立の自然史博物館は国内に存在せず、学術界では長年設立が提言されてきた。2011年の東日本大震災では多数の標本が被災したことから、日本学術会議は翌年、標本の分散保全の観点から沖縄と東北への設立を提案していた。沖縄では新・沖縄21世紀ビジョン基本計画に位置付けられ、県の重点施策として掲げられている。

記念シンポジウムでは、琉球大学前学長で東京大学名誉教授の西田睦氏が基調講演し、固有の生態系を有する沖縄が国際的研究拠点となる可能性を指摘した。パネルディスカッションでは、創設の意義や課題などを議論し、観光振興や人材育成など多方面への効果を語った。沖縄振興審議会の角南篤会長もビデオで「沖縄はアジア、世界的な中核拠点になり得る」とメッセージを寄せた。