【視点】衆院補選、争点は「辺野古」だけか

 沖縄本島中北部を選挙区とする衆院沖縄3区補選が告示された。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する政党などが支援するフリージャーナリストの屋良朝博氏と、自民公認で公明、維新県総支部が推薦する島尻安伊子氏の一騎打ちだ。沖縄では基地や振興策などの関心が高いが、全国的には安倍政権対野党共闘のモデルケースとして注目されている。
 沖縄市で開かれた出発式で、屋良氏は「辺野古の海には絶対に一本の指も触れさせない」と言明。反対派が抗議活動する辺野古のキャンプ・シュワブ前も訪れ、辺野古移設反対を訴えの柱に掲げる姿勢を鮮明にした。玉城デニー知事も出陣式で「私の後継候補としてお願いしたい」と支持を求めた。
 出陣式で島尻氏は、本当の南北格差解消。交通網の整備による観光振興、子どもの貧困問題を取り上げた。辺野古移設については「苦渋の選択だ」と容認する方針を示した。島尻氏を推薦する公明党県本部の金城勉代表は「政治は結果責任。仕事ができるのは島尻氏だ」と強調した。
 争点として辺野古移設問題がクローズアップされているが、沖縄の未来は辺野古のみで決まるわけではない。両者の経済や福祉政策も注目する必要があるし、本島中北部特有の政策課題にどう対処するかも聞きたい。
 知事選にせよ、今回の衆院補選にせよ、沖縄が取り組むべき多くの政策課題が、ともすれば「辺野古」の陰に隠れがちだった。一方で県民意識調査では、基地問題より子どもの貧困対策を優先して対応するよう求める県民が多かった。沖縄は基地問題に限らず、幅広い政策論争に耐え得る人材を国会に送らなくてはならない。「辺野古」ワンイシューの選挙は望ましくない。
 それにしても、屋良、島尻氏は対照的なバックグラウンドを持つ。屋良氏は元沖縄タイムス社会部長で、新聞記者として豊富な取材経験を積み重ねた。退職後も基地問題のエキスパートとして講演活動を続け、在野の硬骨な論客として知られている。
 元参院議員の島尻氏は安倍政権で沖縄担当相を務め、落選後も大臣補佐官として引き続き重用された。宮城県出身の「ナイチャー」だが、明るく気取らない性格で多くのファンがいる。
 選挙では政策だけでなく人柄も問われる。候補者の演説会などに足を運び、生の声を聞くことも有権者にとって大いに参考になろう。
 安倍政権と対峙する国政野党は、沖縄の衆院補選に熱い視線を注いでいる。立憲民主党の辻元清美国対委員長は9日の代議士会で「沖縄は野党6党派の結節点。力を合わせ、最前線の戦いを勝ち取る」と勝利に意欲を示した。
 大阪12区では、無所属で出馬する共産党の元衆院議員を自由党が推薦する構図になった。沖縄、大阪で野党共闘が奏功するか問われている。安倍政権にとっても試金石だ。参院選の前哨戦として、両補選の結果は大きなインパクトを持つだろう。

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