【視点】独裁、強権まかり通る世界

 世界で権力者が政敵を弾圧したり、報道の自由を抑え込もうとする動きが顕在化している。民主主義や自由を享受している国は一部に過ぎない。独裁や強権が堂々とまかり通る国際社会の現実を直視する必要がある。
 ロシアでは8月、反体制派の指導者ナワリヌイ氏が国内の空港でお茶を飲んだあと、機内で突然意識を失った。ナワリヌイ氏が搬送されたベルリンの病院は、神経剤などに使われるコリンエステラーゼ阻害剤を検出したと発表した。
 ドイツのメルケル首相は、ロシア政府に明確な説明を要求。先進7カ国(G7)の外相は「最も強い言葉で非難する」との共同声明を出した。
 ロシアでは過去にも反プーチン政権の政治家や記者の殺害が相次いでおり、亡命した元スパイが放射性物質で毒殺された事件なども世界を震撼させた。
 プーチン大統領は、一時退任して首相を務めた時期も含め、20年間の長期政権を維持している。さらに憲法改正で2036年までの在任が可能になった。
 大統領選や国民投票による国民の信任が背景にあるものの、トップが君臨する期間の長さは、8年間ほどの在任で「憲政史上最長」となった日本の首相とは比較にならない。
 2018年、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で、サウジ政府に批判的だった記者のカショギ氏が殺害された。遺体は切断、遺棄されたと報じられ、いまだに発見されていない。
 米中央情報局(CIA)や国連の国際調査は、サウジのムハンマド皇太子の関与を指摘したが、責任を問う動きはなく、そのまま幕引きになった。
 サウジの裁判所は昨年12月、事件で5人に死刑、3人に禁固刑を言い渡した。しかし今月7日の「最終判決」では、5人の死刑が覆り、大幅に減刑されたと見られる。トルコ大統領府高官は「カショギ氏に何があったか、誰が彼の死を望んだのか分からないままで、法的手続きの信頼性に疑問が残る」としている。
 サウジは世界最大級の産油国で、ОPEC(石油輸出国機構)の指導国として国際原油市場に強い影響力を持つとされる。石油を全面的に輸入に依存する日本にとって重要な国であることは間違いないが、自由や民主主義の価値観を共有できる相手であるかは疑問が残る。
 アジアの超大国に変貌しつつある中国も、良くも悪くも日本とは切っても切れない間柄だ。もともと共産党による事実上の独差体制であると認識されてきたが、ここへ来て香港での民主化弾圧、三権分立を公然と否定した政府の声明が、世界に衝撃を与えた。
 中国では報道の自由の抑圧も常態化しているとされる。最近は、中国国営中央テレビの英語放送でキャスターを務めるオーストラリア国籍の女性記者拘束、同国の中国特派員記者2人の緊急帰国がニュースになった。2人の帰国は、中国当局が「国家安全保障上の問題」を理由に事情聴取を求めたためと見られる。
 ソ連の後継国として強大な軍事力を持ち続けるロシアにせよ、21世紀の覇権を米国と争う中国にせよ、国連安保理の常任理事国であり、世界に強い影響力を持つ主要国である。世界での存在感は、日本より圧倒的に大きい。
 独裁者が世界を闊歩(かっぽ)し、民主主義国が肩身の狭い思いをする。話が逆だと思われるかも知れないが、21世紀がそんな世界になる可能性は、あながち杞憂ではない。
 民主主義は水や空気のように当然にあるものではなく、そっと大切に守り続けていかなければ、国内でも国外でも、いとも簡単に破壊されてしまう。日本は改めて国の基本となる価値観を再確認し、民主主義国家間の連帯を深め、独裁国家と賢明に渡り合わなくてはならない。

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