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野党、資金の流れに関心 百条委証言、当時の職員も懸念 米事務所問題百条委

2025/11/30

証人尋問を行う百条委員会=27日午後、県議会

県議会の米国ワシントン駐在事務所問題特別委員会(百条委、西銘啓史郎委員長)は、駐在事務所設立当時の担当職員を相次いで証人尋問しており、野党は駐在事務所の資金の流れに関心を寄せている。経費を駐在事務所が直接支払うのではなく、現地の委託業者が県の委託料から立て替えて支払うというスキームが外部から分かりにくく、不透明に映るためだ。当時の担当職員からも「不適切ではないか」という証言が出た。

▽スキーム
県が11月にまとめた報告書によると、県が駐在事務所の活動支援を委託した現地の事業者「ワシントンコア社」に支払った委託料は、駐在事務所が設立された2015年度から24年度までの10年間で6億4182万9204円。
駐在事務所の家賃、人件費、活動費などは駐在事務所が支出したという建前だったが、実際にはすべてワシントンコア社が委託料から支出していた。
当時の担当職員らの証言によると、駐在事務所には県職員のスタッフが所長と副所長の2人だけで、出納責任者がいなかったため、直接予算を執行することができなかったという。

駐在事務所の2代目所長だった運天修氏は26日の証人尋問で「コア社を通して支払う形になっているのは、法人としては独立性が保てないと思っていた。直接支払いができないので不適切ではないかと」と述べ、資金のスキームに当初から懸念があったと明かした。
米国側から、株式会社として設立された駐在事務所に実態がないとみなされた場合、ビザで米国に滞在している駐在員の地位が「脅かされることが懸念される」(運天氏)というのが理由だ。

資金のスキームについて、初代副所長だった山里永悟氏は27日の証人尋問で「(担当課である地域安全政策課の)課長とも相談しながら、関係部局との調整の上で組み立てられていった」と答弁。駐在事務所のような組織の前例がない中で、県が独自に案出した仕組みだったことをうかがわせた。
不自然な資金の流れに関しては、県が設置した調査検証委員会も3月にまとめた報告書で「県、DCオフィス社(駐在委事務所)およびコア社は別法人であり、契約関係がない中での役務提供は贈与と考えられる可能性があり、税務対応が必要となる可能性が否定できない」と指摘する。

▽自治体の「政治活動」
県が駐在事務所を株式会社として設立する必要性に迫られたのには理由がある。
駐在事務所は故・翁長雄志知事(当時)が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を米国内で発信するため、知事選で設立を公約した。そのため米国での設立に当たり、外国の代理人であることを米国政府に申告する「FARA(ファラ)登録」を行なわなくてはならず、受け皿として何らかの法人組織が求められた。
駐在員が米国に滞在するためにはビザを取得しなくてはならないが「政治活動を行う公務員」のビザは存在しない。駐在員は現地の法律事務所から助言を受け、苦肉の策として、米国に転勤する民間会社の職員に与えられる「L1ビザ」を申請・取得した。
不自然な資金の流れも、駐在事務所を設立するため、無理に無理を重ねた結果と言える。

そもそも自治体の業務に政治活動は予定されていない。「辺野古移設に反対することを目的とした県庁の出先機関」という出発点から飛躍があった。
「思い至らなかった」「反省がある」―。証人尋問で県議の追及を受け、唇をかむ当時の担当職員たち。その姿は県政のトップダウンで「政治活動」を命じられた公務員たちの声なき悲鳴だったのかも知れない。
(仲新城誠)