「是正機会を放置」 米事務所問題で県民集会
ワシントン疑惑解明・住民訴訟について説明する原告の仲村氏=13日午後、那覇市の沖縄船員会館
沖縄県のワシントン駐在事務所を巡り、設立と運営に重大な違法があったとして、玉城デニー知事に対し約3億2500万円の損害賠償を求める住民訴訟を提起した仲村覚氏(一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラム理事長)は13日、那覇市内で県民集会を開いた。県が示した知事の減給などの対応を「幕引き」と批判し、「司法の場で県政の構造的問題を明らかにする必要がある」と強調した。
住民訴訟の代理人を務める照屋一人弁護士は、訴訟の主な争点として、①意思決定の欠如と設立の違法性②駐在職員の身分と地方公務員法違反③米国ビザ申請における虚偽記載の疑い④不透明な資金の流れ―の4点を挙げた。
照屋弁護士は第三者委員会の報告を踏まえ、「県は違法性を是正する機会が何度もあったのにもかかわらず、対応を放置し、問題を深刻化させた」と指摘。玉城知事就任後に支出された委託料を中心に返還を求める考えを示した。
同事務所不正支出の真相解明を求める県民の会会長の砂川竜一氏は、事務所設立の経緯自体に重大な疑義があると指摘した。県が基地問題や辺野古移設への反対を目的に米政府へ直接働きかけるため、長年、在沖米国総領事館で勤務し、米国政府との関係構築に豊富な経験を持つ平安山英雄氏を初代所長に据えた可能性があるとの見方を示した。
平安山氏は約2年で退職し、後任には県の基地対策課職員が就いた。砂川氏は「平安山氏、さらには米国務省や関係者をも欺く形で事務所が運営されてきたのではないか」と述べ、設立から運営に至る一連の過程の不透明さを問題視した。
県議会に設置されたワシントン駐在問題特別調査委員会(百条委員会)の委員である新垣淑豊県議は、これまでの調査で複数の違法性や重大な手続き上の瑕疵(かし)が浮かび上がっていると説明した。委員会は証人喚問を進めており、全容解明を目指すという。
新垣氏は、海外を経由した委託契約の形態が「ブラックボックス化」しやすく、議会や監査のチェックが及びにくい構造的問題を孕んでいると指摘。今後、ワシントンに限らず、観光や物産振興を目的とした海外拠点設置が検討される中で、厳格な検証体制を整えなければ同様の問題が繰り返されかねないと警鐘を鳴らした。
仲村氏はこれまで2度行った住民監査請求がいずれも却下されたことに触れ、「住民監査制度そのものが機能不全に陥っている」と批判。「違法な支出であっても後から是正すれば許されるという前例を作れば、行政のモラルが崩れる」と述べ、訴訟を通じて責任の所在を明確にする必要性を訴えた。
また、ワシントン事務所は基地問題や先住民族勧告を巡り、「沖縄の主権が中国に奪われる」というナラティブ(物語)に利用される国際発信地になっていると主張。「中国に乗っ取られないようにするためにも、事務所を再開させてはならない。県が暴走したときは県民が止めなければならない」と訴えた。